今城なる小丘が上に雲だにも著くし立たば何か歎かむ
早世した孫・建皇子を深く悼んだ斉明天皇の歌と伝わります。せめて墓の上に、あの子と分かる雲だけでも立ったなら――。王ではない、ひとりの人間の悲しみが、空へ向かう歌です。
飛鳥★星まつり 2026 | 世界遺産登録記念
恒例の「えみさんぽ」スペシャル版
自転車の速度で風を受け、川の流れをたどり、
千四百年前の飛鳥へ。
王の眠りから、祈りの宮へ。
舞台の外にある、もう一つの物語
十月二十五日、歴史劇『水の声を聴いた―斉明天皇の飛鳥―』を上演する俳優・なかええみと、斉明天皇ゆかりの飛鳥を巡ります。
年号や出来事として知っていた歴史も、その土地を自ら進むと、少し違う姿を見せます。坂の勾配、風の温度、川の光、石室の静けさ。飛鳥の大地に今も残るものを、目だけでなく身体で受け取る旅です。
王の墓から、水で時を測った遺跡へ。祭祀のために水を導いた石から、祈りと剣が交わった宮跡へ。五つの場所は、斉明天皇という一人の女性の生涯と、舞台の場面へとつながってゆきます。
古代の大地で、
斉明天皇に出逢ってください。
王の眠りから、祈りの宮へ
場所を選ぶと、旅の中で出逢う物語が開きます。
斉明天皇と、その娘・間人皇女の合葬墓と考えられている八角形墳。
専門ガイドの案内で、石室の内部を間近に見学します。隣接する越塚御門古墳の石室では、映像作品『三代皇女物語』(約12分)を鑑賞。王・娘・孫娘へと連なる時間を、石に囲まれた空間で感じる、この日だけの特別な始まりです。
眠り|記憶|三代の皇女『日本書紀』に記された漏刻、水の流れで時を測った施設の跡。
斉明天皇六年(660)、中大兄皇子が造ったと伝わる水時計〈漏刻〉。絶えず流れる水を、人の営みを整える「時」へ変えた場所です。水をめぐる技術と政治、その背後にあった新しい国づくりを想像します。
水|時|国づくり湧水を受け、船形の槽から亀形の石へと水を通した祭祀の空間。
水は石のあいだを順に渡り、亀の鼻から甲羅へ、そして尾へと流れます。ここで何が祈られ、誰が水に触れたのか。答えを一つに決めず、斉明天皇が飛鳥に開こうとした祈りの場を、流れの形から読み取ります。
湧水|祭祀|浄め丘の上に横たわる、幾何学的な溝を刻んだ謎の石造物。
酒を造った、薬を調えた、水を用いる儀礼の場だった――用途には今も諸説があります。分からないものの前で立ち止まり、石の肌と溝に残る人の手を見つめることも、古代に出逢う大切な時間です。
石|水路|謎皇極天皇の宮とされ、乙巳の変の舞台となった場所。
宝皇女が皇極天皇として政を行い、目の前で蘇我入鹿が討たれたと伝わる宮。地中には、岡本宮、板蓋宮、後飛鳥岡本宮、飛鳥浄御原宮へと続く時代が重なります。ツアーの終わりに、舞台『水の声を聴いた』の核心となる場所へ立ちます。
宮|乙巳の変|決断自転車の速度で出逢う飛鳥
史跡と史跡のあいだにも、飛鳥の物語があります。風、川、田畑、花、石。土地そのものを感じながら進みます。
飛鳥の風景に、古代の声を重ねる
史跡の解説だけでなく、その土地に響く歌をご紹介します。文字で読む歌を、風景のなかで声として聴く――それも、この旅ならではの時間です。
今城なる小丘が上に雲だにも著くし立たば何か歎かむ
早世した孫・建皇子を深く悼んだ斉明天皇の歌と伝わります。せめて墓の上に、あの子と分かる雲だけでも立ったなら――。王ではない、ひとりの人間の悲しみが、空へ向かう歌です。
神なびの 三諸の神の 帯にせる明日香の川の 水脈速み生しため難き 石枕 苔生すまでに新夜の 幸く通はむ 事計り夢に見せこそ 剣太刀斎ひ祭れる 神にしませば
明日香川を、三諸の神が身に結ぶ帯のように見る歌。流れる水、苔むす石、夜ごとの無事を願う心が、一つの風景に重なります。古代の人が自然と祈りを切り離さずに見ていた、その眼差しに触れます。
この旅だけの体験
牽牛子塚古墳は専門ガイド付き。越塚御門古墳では、石室の内部で映像作品『三代皇女物語』を鑑賞します。
舞台をつくるために土地を歩き、史料と身体の両方から斉明天皇を考えてきた、なかええみの言葉とともに巡ります。
点在する史跡のあいだにある田畑、坂道、川、風も旅の一部。飛鳥の地形を、自分の身体でつないでゆきます。
飛鳥★星まつり 2026
世界遺産登録記念、キトラ古墳壁画体験館「四神の館」十周年記念。サイクリングツアーは、三日間の催しの一つとして開催されます。
チラシを選ぶと、大きな画像でご覧いただけます。
開催概要
自転車について飛鳥駅で各自レンタサイクルをお借りいただき、牽牛子塚古墳駐輪場へ直接お越しください。飛鳥駅から約10分です。
雨天時について小雨決行。大雨の場合は「四神の館」シアタールームにて、斉明天皇と飛鳥をめぐるスペシャル講座を行います。
映像鑑賞について越塚御門古墳の石室内で、映像作品『三代皇女物語』(約12分)をご鑑賞いただきます。
コーディネーター大和 絵奈
主催飛鳥むすひworks
共催国営飛鳥歴史公園